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政権に対し批判はしてはならないような印象を受ける

ネット配信された産経の記事を読んで、「は?」と思ったのだが…。


「イスラム国寄り」?発言、野党・元官僚続々」 産経新聞 2月4日(水)7時55分配信

 ■「口実を与えたか検証」「殺人の引き金」

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の日本人人質「殺害」事件をめぐり、安倍晋三首相の対応が「(事件を起こす)口実を与えた」といった指摘が野党から相次いでいる。「話ができる集団ではない」(菅義偉(すが・よしひで)官房長官)相手との交渉の余地がない中、「イスラム国が口実とした」とは表現せず、政府の責任追及の材料とする意図が透けてみえる。こうした批判は過去に政府の中枢を担った元官僚からも続出している。(酒井充)

 ◆首相「気配り不必要」

 「質問はISIL(イスラム国)に対し批判をしてはならないような印象を受ける。それはまさにテロリストに屈することになる」

 首相は3日の参院予算委員会で、質問に立った共産党の小池晃政策委員長を、こう突き放した。小池氏は首相が1月17日にエジプトで行った演説で、イスラム国対策として2億ドル(約236億円)の人道支援を表明したことを追及。「拘束された日本人に危険を与える可能性があったのではないか」と再三問い詰めた。

 首相は「過激主義と戦うイスラムの国々をしっかりと支援していくと表明することが極めて重要だ」と強調。「テロリストに過度な気配りをする必要は全くない」と声を張った。

 共産党も含め野党各党はイスラム国を非難しているが、小池氏のように「イスラム国側に立った視点」も目立つ。民主党の枝野幸男幹事長は1日、首相の支援表明について「口実を与えるようなことにつながっていないか検証したい」と記者団に語った。言葉を選びつつも、口実を与えた可能性があるのは首相だと言わんばかりだった。

 イスラム国に対峙(たいじ)する中東諸国への2億ドルの人道支援の一部は、平成26年度補正予算案に盛り込まれている。政府が補正予算案を閣議決定したのは、人質事件が明らかになった1月20日より前の1月9日。この時や首相演説時に懸念を示す野党は見当たらなかった。

 ◆解放へ首相辞任提案

 イスラム国側に一定の理解を示すような言動は元官僚からも出ている。

 駐イラン大使の経験がある孫崎享氏はツイッターで「安倍発言で殺人の引き金」などと投稿。小泉純一郎政権などで5年近く安全保障・危機管理担当の官房副長官補を務めた柳沢協二氏はインターネット番組で、人質解放のための首相辞任を提案した。

 元経済産業省官僚の古賀茂明氏は1月23日のテレビ朝日番組で、「首相は有志連合の仲間に入れてほしいと思っている」「首相は本当は空爆や武器供与を願っている」と根拠不明の持論を展開。外交や危機管理の専門家とは言い難い古賀氏の主張は6分以上続いたが、司会者が逆の立場から発言することはなかった。


この記事を読んで、どこが「イスラム国側に立った視点」「イスラム国側に一定の理解を示すような言動」なのかがよくわからない。
共産党の小池晃政策委員長が求めたのは、安倍総理が言うような「テロリストに対する過度な気配り」ではない。既に人質として拘束されている可能性がある日本人に対する気配りだろう。微妙に論点をずらしてはいないか?

さまざまな報道によれば、昨年10月の時点で後藤さんは既に消息を絶っており、夫人の元にISILを名乗り身代金を要求するメールが届いている。何度かメールを交わす中で、夫人は夫しか知り得ない事実が書かれていることから、ISILによる拉致であることを確信し、外務省に相談している。しかし、その後の進展がない。

12月2日、衆議院解散。総選挙を経て安定多数を獲得し、組閣。総理は外遊へ出る。
そしてあのスピーチだ。
「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含めISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。」

動画公開後、日本政府は「あの2億ドルは人道支援に限られたもので、軍事的な支援ではない」と抗弁していたが、残念ながらこの文面では、ISIL側につけ込まれる隙だらけだ。あの狡猾なテロリスト集団が、こちらの思惑通りに理解してくれるはずなどないことは、誰にでもわかるではないか。解説者たちがテレビで言っていたように「ISILが意図的に論理をすりかえている」のではなく、スピーチの文面そのままを突きつけて来ただけに過ぎない。「彼らは、何を、誰に対して言い訳しているのだろう」と思いながら聞いていた。

昨日の外務大臣の答弁によれば、政府は、ISILが12月20日に湯川さんと後藤さんの動画をアップするまで、ISILの犯行と断定できずにいたらしい。
夫人からかなり確定的な報告を受けているはずの外務省が、ただちに対策室を設置し、あらゆる情報集めに尽力した割には、2か月もの間、何も成果が上がっていない。

外務省はそんなに無能なのか?
はっきりと断定できなかった。それはそれで、別の意味で問題ではないのか?
総理は自衛隊の派遣を可能にしたいようだが、2ヵ月間、何も情報収集出来なかった政府の力量で、危険な地域へ送り込まれる自衛隊員こそ気の毒である。

どうも腑に落ちない。どこかに嘘はないのだろうか?

そうした疑問、今回の事件の原因や対応を検証すべきではないのか、と問うことが、なぜ「イスラム国寄り」ということになるのだろう?
衆参予算委員会の質疑応答を聞いていても、話が噛み合っていない。
それは、安倍総理が「政府の対応を批判することは、テロリスト集団を利することになる」というロジックに終始し、まともな答えを返さないからだ。

誰も中東への2億ドルの人道支援を批判などしていない。
日本人が人質として拘束されている可能性があるにもかかわらず、挑発とも受け取られかねないスピーチをしたことに対し、果たして問題はなかったかと尋ねているだけだ。

「批判の前に対案を出せ」とか「お前なら救えたのか」という声も良く聞くが、相手が悪すぎるから仕方がないと言うのは弁解にならない。こういう事件の場合、政府にとっては人質を奪還できれば勝ち、どんなに努力しても命を救えなければ、国を背負うものとして負けでしかない。

自民党政権で出来ないことが、他の政権で出来るはずはないと、私も思う。
しかし、今回2人の命を救えなかったのはなぜか、どうすれば救えたのか。それをきっちりと検証せずして、どうして対策を立てられるだろうか。
犠牲となった2人の命を無駄にしないためにも、真摯な検証が求められる。
「自己責任」と切り捨てるのは簡単だ。しかし、今後、万が一「自己責任」ではない事態が起きた時に、どのように対処できるのか。どのように動けるのか。それを導き出すには、今回の事件への対処を細かく検証するしかないのではないか。
再び「バイプはないが全力を尽くして情報収集にあたっている」と繰り返しながら右往左往するのだろうか。

それを求める声を「テロリスト寄り」と封殺することは、それこそ「政権に対し批判はしてはならないような印象を受ける」。さらに個人名を挙げて発言を列挙した記事中の表には、何の意味があるのかとしか言いようがない。

ジャーナリズムの使命は、あくまで権力の監視にある。
政府の御用新聞と化し、意図的にイメージを誘導しようとする産経の倫理観を疑う。

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10 Comments

はなせんめい  

No title

外国で働く日本人の安全を願うばかりです。

2015/02/07 (Sat) 17:45 | EDIT | REPLY |   

ちぇしゃ猫  

No title

はなせんめいさん、今回の事件は、実に悲しい事件でした。
どうして被害者がこれほどまでに叩かれてしまうのでしょう。

総理が勇ましい言葉を口にするたびに、在留邦人の命が脅かされるように思います。
後藤さんの遺志は、戦禍で苦しむ弱者に光を当てることであったことを思うにつけ、「9条破棄すべし」という世論誘導に使われないことを祈ります。

2015/02/08 (Sun) 15:02 | EDIT | REPLY |   

ちぇしゃ猫  

No title

報道の方向性や解説者の論調、政府の発表等々を見ながら、私の中でずっと感じていた違和感を整理し、代弁してくれるような記事がありました。

「国家が嘘をつくとき」
http://toriiyoshiki.blogspot.jp/2015/02/blog-post_4.html

そして「ジャーナリストであること、そして憲法9条」
http://toriiyoshiki.blogspot.jp/2015/02/blog-post.html

2015/02/08 (Sun) 15:08 | EDIT | REPLY |   

ちぇしゃ猫  

No title

9(月) 午後 6:19のナイショさま。こんばんは。
御覧いただいたのですね。ありがとうございます。

20年以上前、夏合宿の連絡をくれたゼミの後輩たちに宛てて、手紙を書いたことがあります。ちょうどPKO法制定の後になります。自衛隊を初めて海外に派遣することに対して、自分の中でどうしても整理できずに、世界の情勢や紛争の歴史が書かれた本を探して読みました。そこにあるものは、民族間抗争のほとんどない日本からは想像もつかない、差別と抵抗と抑圧と対立の果てしない繰り返しでした。それぞれの譲れない正義や理由があることを理解しました。一方の価値観で結論を下せば、またそれを火種に新たな抗争が生じてしまうだろうこと。また、暴力で抑え込めば、新たな憎悪の連鎖を生むこと。
そうしたことを知った上で、国連の役割を考えた時に、ようやく自分の中で落としどころを見つけた、と、そんなことを書いたと思います。

2015/02/10 (Tue) 22:21 | EDIT | REPLY |   

ちぇしゃ猫  

No title

ISISの前身であるパアス党やアルカイダにしても、アメリカが中東に手を突っ込み、武器を与えてボロボロにしたあげく放り出した結果ではないのかという思いは、ずっとありました。
よく考えるのですが、レジスタンスとテロリズムの線引きはどこでなされるのでしょうか?
正義と悪は、そんなに簡単に建て分けられるものなのでしょうか?
極めてデリケートな問題だという配慮が、日本の政府、安倍総理にあったのかどうか、あのスピーチを聞きながら「おや?」と思ったのは否定しません。

出来事を時系列で追えば負うほど「本当は、日本政府は二人を助ける気などなかったのではないか」、そんな思いがしてきました。そんな疑問を持った人は少なくないのだと、今いろいろなサイトを読みながら思います。

2015/02/10 (Tue) 22:22 | EDIT | REPLY |   

ちぇしゃ猫  

No title

あの田母神氏は、湯川さんと交流がありながら、彼が拘束された動画がアップされた時には、手のひらを返したように切り捨てています。「国・国民を守るために命をかける」等と言いながら、一旦事が起これば真っ先に逃げ出しました。
私は安倍首相にも同じ臭いを感じます。

勇ましいことを言っているけれども、最後の最後に、この政府は国民を守ってくれるのでしょうか?
「国」って何なのでしょうね。二人の命さえ救えない政府が、果たして1億2千万の人間を守れるのでしょうか?

私には今の政権が何を目指しているのか、理解できません。

2015/02/10 (Tue) 22:23 | EDIT | REPLY |   

ちぇしゃ猫  

No title

1・26の記念提言を読みましたら、マハトマ・ガンジーが友人に贈った言葉として、とても印象的なくだりがありました。
「これまでに会った中で最も貧しく、最も無力な人の顔を思い出して下さい。そしてあなた自身に次のように問いかけて下さい。自分がしようと思っていることは彼の役に立つのだろうか?」

また〈相手に向けていたまなざし〉がどんなものであったのかを身につまされて感じた結果、自分の過ちを胸に刻むことができたという、「維摩経」中の舎利弗と天女のエピソード。
病気の理由を「一切衆生病むを以て、是の故に我病む」と答える維摩結等々。

全て他者との同苦、排他主義ではなく、差異を多様性の源として互いの尊厳を守り合うことであり、それこそが政治の原点とすべきことなのだと感じました。
涙が出る思いでした。

道のりは遠いかもしれません。
それでも、世界は変えられるのでしょうか。

2015/02/10 (Tue) 22:29 | EDIT | REPLY |   

ちぇしゃ猫  

No title

「本当に未来の社会の動向を決定するのは、わずか5%の、活動的で献身的な人々の力なのです。その5%の人々が、やがて文化の総体を変革していくのです」というエリース・ボールディング博士の言葉に、希望を見出したいと思います。

とりとめがなくなりそうなので、この辺で。

2015/02/10 (Tue) 22:29 | EDIT | REPLY |   

ちぇしゃ猫  

No title

「後藤さんの仇を」「憲法いらない」産経がコラムで
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150209-00010001-alterna-soci

何がしたいか透けて見えるような……。完璧に勇み足な産経です。

2015/02/10 (Tue) 23:26 | EDIT | REPLY |   

闘争の兆し  

No title

つけこまれないように完璧になるよう努力をしないといけませんね

2015/10/07 (Wed) 12:41 | EDIT | REPLY |   

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